【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2021年3月

*動物と植物の関係 ~マタタビを好むネコ、苦い植物を摂るヒト~

 

植物と動物の関係は複雑で、植物が動物に食べられるだけの関係だけでは説明がつきません。それぞれの視点からみると、お互いを有効活用しているのが見えてきます。その関係性にはまだまだ謎が多く、だからこそ可能性が潜んでいます。

 

植物の視点から動物を見た場合、動物は種や花粉を運んでくれる媒介者です。動物側は意識して行動していることはなく、実を食べて消化されなかった種を遠くに運び、体に付着した花粉が遠くの同種との交配につながるなど、動物が利用されているように見えます。動物にとっても必要な栄養を摂取できることから、Win-Winの関係ではあります。

 

一方、動物の視点から植物を見た場合、食料であること以外にも活用例があります。ネコがマタタビを好むというのはよく知られていることですが、ネコはマタタビ中の「ネペタラクトール」という成分を摂取して多幸感を得ているようです。そして、このネペタラクトールは蚊を寄せ付けない効果もあることが判明しています。多幸感からマタタビを体に擦り付けたネコは、危険な病気を媒介する蚊から身を守っていると考えられます。進化の過程でマタタビを好む個体が生存しやすかったのではないでしょうか。ネコは防虫効果を意識してマタタビを使用しているわけでは有りませんが、結果的に植物を活用している例となります。

 

野生動物に比べ、ヒトは圧倒的に植物を利用していると言えます。少量の植物毒を薬として使用することは生薬の世界では日常です。人類は科学が発達する前から経験則でこれらを探索していました。しかし、苦味は本来「毒」の味。良薬口に苦し、毒と薬は紙一重であり、本来は忌避するものです。ヒトは苦味を感じると、唾液中に特殊なタンパク質を放出して苦味の感知を鈍くします。これにより、例えばコーヒーに含まれるカフェインの覚醒作用を利用できます。本来、脳には危険な毒と判断される苦味。しかしヒトにとって苦味は、経験によって楽しめるようになった究極の味なのかもしれません。

 

植物中の成分は日進月歩で解明され、実社会に活用されていますが、まだまだ序の口なのかもしれません。植物と動物の関係を見直すことで、新たな発見がありそうです。

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