【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2021年12月

*糖~植物からの贈り物、リスク、そして可能性

 

甘いものは好きですか?美味しいですよね。甘いものに含まれる「糖」は、工業製品の増えた現代でも植物が作り出したものを人類は活用しています。糖は人類の発展に様々な影響を与えています。それは恩恵であり、ときにリスクであり、そして可能性でもあります。植物が作る糖が人類にどの様に関わってきたのか、見ていきましょう。

 

「糖」といっても様々ありますが、皆さんがよく目にするのは砂糖(≒スクロース)でしょう。砂糖はサトウキビや甜菜(ビート)など糖を貯める植物の汁から精製されます。砂糖の歴史は古く、2500年前には活用されていた例があるそうです。しかし、中世までは一部の人だけが口にできる高級品でした。流れが変わるのは18~19世紀の頃です。ヨーロッパは寒冷のためにサトウキビが育ちにくかったのですが、甜菜に含まれる糖がサトウキビのものと同じと判明し、さらにドイツの化学者アンドレアス・マルクグラーフが甜菜から砂糖を取り出すことに成功しました。時の権力者であるナポレオンによる政策で、大陸からの砂糖の流入が減り、ヨーロッパ内で砂糖を自給する必要が出てきた時勢も後押しし、甜菜からの砂糖生産が本格化して市場の砂糖の流通量が増えました。その後、プランテーションで作られた砂糖の流通も復活し、砂糖の価格は低下しました。庶民が紅茶に砂糖を入れられるようになると、その味を求めて人々は働き、一部ではこれが「産業革命」の後押しになったのではないかとも言われています。人々は「糖」を求めるために効率化を図っていったのですね。(仕事後のご褒美スイーツと一緒です)

 

この様に、砂糖は人類文明を発展させる原動力となった一面を持っていますが、最近の研究では糖の様々なリスクが指摘されています。糖は様々な疾病の直接的な原因とされ、また高い依存性もあることから過食に繋がり、肥満による生活習慣病などの間接的な原因とされています。国によっては肥満税や砂糖税(糖の含まれる食品に課税)を導入して、砂糖の消費量を下げようとしています。一方で、糖のエネルギーは脂肪に比べて迅速に吸収・活用されるため、疾病や飢餓の対策には必要なのではないかと考えられます。要は取り過ぎなければOKということではないでしょうか。(それが難しいのですけどね!笑)

 

過去には人類発展を鼓舞し、しかし現代ではリスクともなった糖ですが、未来への可能性も残しています。SDGsが求められカーボンニュートラルな生活環が必須の時代が到来しょうとしていますが、糖はバイオエタノールの原料として既に活用されています。植物が空気中のCO2を固定して作った糖は、化石燃料と異なりCO2増加に起因しないという考えです。また、プラスチックの原料としても研究が進んでいます。現代ではたくさんの石油由来の物が溢れていますが、これらが少しずつ「糖」由来の物に置き換わる可能性があると思うとワクワクします。「食べるため」だけに植物を育てる時代から「創るために」植物を育てる時代が既に来ています。

 

バイオエタノールやバイオディーゼルの生産のために、これまで食用・飼料用だった穀類が使用され、価格高騰や食料供給を圧迫しています。今の「糖」の生産力や分配では、「食」と「創」を両立することは難しい状況です。現在も高効率の「糖」生産を行う品種改良や研究が進んでいます。これからの農業は食料供給だけでなく、エネルギー・材料供給の場として機能するでしょう。「糖」の創る未来をお楽しみに。

 

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