【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2022年10月

*甘柿の「渋み」は姿を隠しているだけ。渋抜きのススメ。

 

先日知人から柿をもらいました。食べると非常に甘く、瑞々しい甘柿で、お礼の連絡を入れると、この柿は渋抜きをした“渋柿”だったと聞いて驚きました。「渋抜き」は大変かと思い、その方法聞くとそれほど難しくなく、逆になぜこれだけで美味しい柿が食べられるのか気になり調べてみました。

 

渋柿の「渋み」は「カキタンニン」を主とするタンニン一群の化合物が原因です。カキのタンニンは、果実ができ始めの頃は高く、種子が未成熟の状態で動物に捕食されてしまうのを防ぐために含まれると考えられています。種子が成熟し、実も熟れると渋みが減り、動物に捕食されやすくなります。

 

実は、柿の渋みが減っても、果実のタンニンが減っているわけではありません。タンニンは水に溶けやすい状態(水溶性)だと舌の味蕾に作用して渋みを感じますが、水に溶けにくい状態(不溶性)で存在すると口にしても渋みは感じないという性質があります。渋柿のタンニンは、同じく果実で作られる「アセトアルデヒド」と結合することで不溶化して渋みが減り、甘い果実と感じるようになります。このメカニズムを利用したのが「渋抜き」です。

 

渋抜きは様々な方法はありますが、「アセトアルデヒドとの結合」を起こしているという部分は変わりません。

 

1. 酒漬け:お酒中のエタノールはアセトアルデヒドの元物質です。酒漬けにすることで、果実にアセトアルデヒドが作られてタンニンと結合して渋みが抜けます。

 

2. ドライアイス(CO2処理):柿とドライアイスを密封すると、酸素比率が下がり、柿の正常な呼吸が抑えられます。ブドウ糖から始まる解糖系の産物であるピルビン酸が分解されずにアセトアルデヒドに変わるため、渋抜き効果が得られます(2~4日)。

 

3. 干し柿:皮を剥くことで表面に皮膜が張り、呼吸が抑制されます。その結果、アセトアルデヒドが合成されて渋抜きされます。

 

様々な方法がある渋抜きですが、その原理はどれも同じです。試行錯誤を経て、同じ原理にたどり着くなんて、先人の知恵の奥深さを感じます。私が食べた柿は通販で購入したドライアイスで処理したもののようでした。渋抜きすれば美味しい柿が食べられるなら、渋柿でも1本自宅に欲しいですね。渋抜き、挑戦してみてください。

All rights reserved - Inplanta Innovations Inc.