【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2022年12月

*温暖化による水面上昇に適応 -水上農法-

 

人類の発展の結果、温暖化による地球極部の氷融解、海水面の上昇が懸念されています。すでに一部の海抜の低い地域では影響が出ています。例えば、バングラディシュは河川の浸食や鉄砲水など頻繁な洪水に見舞われ(アジア開発銀行、2021年)、さらに、2050年までに国土の17%と食料生産の30%を失うとされており(IMF、2019年報告)、危機的な状況にあります。この状況を改善する施策として「水上農法」が再注目されています。

 

水上農法は、水生植物(ウォーターヒヤシンスなど)編み込み、更にそれを層に重ねることで水に浮かぶイカダを作るところから始まります。そこに根菜や葉野菜の種を撒き栽培します。時にはイカダの上にツルを張る屋根を作り、ウリの実を取るような栽培も可能です。植物の上で植物を栽培している状態で、土壌は少しも使いません。イカダの水生植物が分解されることで肥料分となり、収穫後の残留物から堆肥を作ることもできます。この面ではとても持続的な農法と言えます。

 

もともと、水生植物のイカダを使う水上農法は200年の歴史を持ち、一部の地域では伝統農法として続けられてきました。1年に5ヶ月間の洪水時期でも農業ができるようにと続けられてきた手法ですが、温暖化の影響で洪水時期は8~10ヶ月に延びて、より長い期間を水上で栽培する必要が増えたために水上農法が見直されています。最近では、水上農法が十分な収入を得る手段と認識され(従来水田の数倍の収入)、土を使って農業をしていた農家が水上農法に転換する例も増えているようです。

 

一見簡単に見えますが、コストや手間がかかっています。1つのイカダ(6 x 1 m)には1.2トンの水生植物を2ヶ月かけて作成します。大変な重労働です。3~4ヶ月使用したら、新しいものに交換する必要があります。新興的な分野のためイカダ用水生植物のコストも年々上がり、利益率が下がるなど、経済的な持続性には課題もあるようです。しかし、水面上昇、洪水期の長期化など今これらの問題に直面している地域の方々にとって現実的な解決策であるように感じます。伝統的な手法だけでなく、現代技術で補いながら発展していって欲しいですね。

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