【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2023年3月

*植物に眠る可能性 -難燃性綿花の作出-

 

植物は、私達の衣食住に欠かすことができず、日々新しく有用な特性を持った作物種が「育種」によって誕生しています。「育種」の歴史は古く、人類が狩猟・採集生活から農耕・牧畜の生活へと変化した太古から始められたと言われています(地域差がありますが紀元前8000~4000年から)。こんなにも長く育種を行っていても、まだまだ植物には可能性が眠っているという研究がありましたので、ご紹介します。

 

難燃性繊維をご存知でしょうか?消防服や防火カーテンなど、繊維を燃え難くすることで、出火の際に被害を抑えてくれる商品は、今や普遍的に使われていますが、ほとんどが化学製品(石油製品)由来であり、燃えにくい代わりに有害ガスが出てしまうなど短所も見られました。最近、この難燃性繊維を育種で植物から作り出すことに成功しています。

 

その研究では257系統を作出して、採られた綿を織った繊維の難燃性を調査したところ、そのうち5系統が難燃性を示しました。さらに、後世代でも難燃性の綿を作る系統が確認されたため、難燃性綿花を作る新たな品種が誕生したことになります。綿花の育種は古くから行われているようですが、現代技術により特定できる有用な形質もあるため、この様な発見につながったようですね。

 

この研究が発表されたのは、今年1月です。工業的に魅力的な性質が、古くから栽培されてきた植物から現代で発見・開発されるのは興味深いですね。植物にはまだまだ可能性が眠っているのです!

 

Flame resistant cotton lines generated by synergistic epistasis in a MAGIC population.

(https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0278696)

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