【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2023年4月

*意外な場所に住む植物の意外な発見!

 

旅行などで海沿いを歩いていると、ヤシやマツの木などの防風林をよく見かけます。そんな時、ふと、「なぜ、こんな乾燥、強風、塩害など過酷な環境でも、枯れや倒れることなく生きていられるのか?」と思うことがあります。

今回は、そんな過酷な環境でも、どうして堂々と威勢よく生育できているのか、植物の形態的特徴の観点からみていきたいと思います。

 

まず1つ目は、マツ(松)の木についてです。海岸線沿いで生育しているのは主に「クロマツ(黒松)」で、塩害にも強い植物です。クロマツは、塩風にあたる過酷な環境でも生育でき、葉は細く風の抵抗をほとんど受けません。また栄養も水もほとんどない貧土壌の砂浜でも生育できるのは、根のまわりにマツタケなどのキノコ類が「菌根」を作り、その菌糸が水分やリンやミネラルなどの養分を供給してくれているためと言われています「菌根性樹種)。

 

2つ目として「ヤシの木」が挙げられます。南国の植物としてすっかり定着しているヤシの木も、海沿いなどにずらりと並んでいるイメージをお持ちだと思います。ヤシの木も、台風などで木が多少曲がることはあっても、倒木されたなどのお話はほとんど入ってきません。その理由として、ヤシの木の根は、四方八方に多数の根を深く張っており、深さ約1mほどの垂直根と、横に張る水平根が非常に発達しているため、しっかりと根付き、支えられています。また樹形もすらっとしており風の抵抗も受けにくく、地上部の幹は繊維質で形成層が無く、芯が無いためしなりやすく、海沿いの強風でも折れたりすることは、ほとんどありません。

 

もともと防風林は、風の力を弱め、農地などの被害を軽減するために造成、維持されてきました。マツにおいては、その名残りとして日本各地の景勝地を作り上げている植物となりました。静岡の「美保の松原」や秋田の「風の松原」など、海岸や湖沼の景観をぐっと引き上げてくれています。皆さんも、冒頭のように「なぜこんなところに植物が生きていられるのか?」と疑問に思うことがあると思います。そんな時に少し調べてみると、そこには思いもよらない新しい発見があるかもしれません。

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