【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2023年5月

*植物由来SAF研究の最前線

 

サスティナブルな社会を目指して、CO2削減の試みがいたるところで実施されていますね。物流で発生するCO2は18.5%とされ、そのうち航空部門は5%を占めます(2021年、国土交通省)。航空業界は「SAF」(サフ)の研究・開発に力を入れています。SAFは「持続可能な航空燃料:Sustainable Aviation Fuel(SAF)」のことです。SAFは、バイオマスや廃食油、都市ごみなどを主原料とし、製造から燃焼までのプロセスを管理することで従来の航空燃料に比べて温室効果ガスの排出量を大幅に削減できます。また、SAFは既存のインフラをそのまま活用できることも利点の一つで、産官学で研究が進んでいます。前記のようにSAFの原料は様々ですが、植物や光合成微生物から作られることが多く、試作が盛んに行われています。今回は、光合成生物由来のSAF製造の状況をご紹介します。

 

・アブラヤシ

アブラヤシから取れるパーム油はすでにバイオディーゼル等で活用されていますが、SAFへの転用も積極的です。アブラヤシは植林してから4年ほどでパーム油が採れるようになります。アブラヤシの栽培が可能な南米などでは、ブラジル国営石油会社や同国民間企業が共同でパーム油からのSAF製造・実用化に向けて開発を進めています。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/04/196d73876015eb16.html

 

・ユーグレナ

光合成をする微細藻類であるユーグレナからジェット燃料が作られています。ユーグレナを活用した健康食品や化粧品などを手掛けるユーグレナ社は、使用済みの食用油と微細藻類ユーグレナから抽出されるユーグレナ油脂を原料に製造されるバイオ燃料「サステオ」の開発を行っています。サステオから作られたジェット燃料は、既に一部の飛行場で使用が可能となっています。

https://www.euglena.jp/news/20230310-2/

 

ポンガミア

 東南アジアやオセアニアに分布するマメ科植物がポンガミアです。ダイズよりも一回り大きな実が特徴で、同じ栽培面積からの収穫で、アブラヤシ(パームやし)と同程度のバイオディーゼルを作れるほどのポテンシャルを持っています。現在、オーストラリアと日本企業(出光興産・J-オイルミルズ)が共同で豪州でのバイオ原料確保によるSAF製造を含む事業を開始しています。ポンガミアの植林・管理、同植林によるCO2固定化・オフセット、SAFサプライチェーン構築(収穫、搾油、輸送、SAF製造)、森林投資などに関する検討を行うようで、2023年中の実証実験が開始されるようです。

https://www.idemitsu.com/jp/news/2022/230308.html

 

この他にも様々な光合成生物でSAFなどのバイオ燃料の研究が進んでいます。今後課題になるのは、使途が重複する植物の分配です。ダイズなど、食糧でありバイオ燃料の原料にもなる様な植物がさらにSAFなどに利用される場合、需要過多で価格が高騰する可能性があり、結果持続的な生産・使用が難しくなります。ポンガミアの様なこれまで食料として使用されてこなかった植物の活用が期待されますね。

 

 

All rights reserved - Inplanta Innovations Inc.