【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2023年10月

*温暖化に備える。気温上昇と農業の変遷

 

2023年7月、世界気象機関(WMO)やEUのコペルニクス気候変動サービス(C3S)が、観測史上、最も暑い1か月であったと発表しました。みなさんも今年の暑さは体で実感されたのではないでしょうか。農業にとっても、気温の上昇はこれまでの農業体系を換えてしまうほどの影響がでています。具体的な例をご紹介します。

 

1. 比較的温かい地域の気温上昇の影響

野菜や作物生産量の多い暖地での気温上昇は、作物の着果不良や収量の低下を招きます。また、病害虫の多発や新たな病害虫の侵入リスクが増加し、管理方法を変える必要があるなど、作物自体と作業コストに影響が出ます。例えば米の白未熟粒の発生や白く濁る現象も、この高温の影響とされています。今年作のお米の質が低下したと言うニュースが9月中頃に有りましたが、まさに影響が出ていることを実感しました。スーパーの野菜コーナーに目を移すと、長ネギなど比較的暑さにも強い野菜も、今年は不良のため産地が北国に集中し、価格も高めです。

 

2. 寒冷地での気温上昇の影響

寒冷地、例えば北海道の東エリアでは、従来冬季の土壌凍結が常態でしたが、気温の上昇に伴いその頻度が減少しています。バレイショの小芋が以前は冬の土壌凍結で枯れていたものが、今では浅い土壌凍結のため越冬し、次作時の雑草化や病害虫の増加の原因となっています。これに対処するためのコストが、人力の要求として増大しています。

 

3. 気温上昇の副次的な影響

高温により気温や土壌の温度上昇が早まり、春先の作業が前倒しになり、収量の上昇に繋がるケースもあります。また、牧草地ではアルファルファのような以前は越冬が困難だった品種の栽培面積が増えてきました。秋だけの収穫だった作物が春収穫も可能となり、これが作業や出荷の分散につながるメリットを生んでいます。

 

今年の夏がそうであったように、気温は実際に上昇していると感じますよね。それは地域での伝統的な農業を不可能にするリスクとともに、新しい作物の導入や作業の効率化のメリットをもたらしています。しかし、今回のような異常な気温の変動は歴史的にも稀であり、新たなメリットが将来のデメリットに変わる可能性も考慮し、注意深く変化を観察し、対応し続ける必要があります。

 

 

 

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