【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2024年9月

*秋を連想させるキンモクセイ!その実態を深掘り

 

日中はまだまだ暑い日がありますが、朝晩はすっかり涼しくなり、だんだんと秋めいてきましたね。みなさんは「秋」と聞いてどのようなことを連想されますでしょうか。

「食欲の秋」「読書の秋」「紅葉」「さんま」「キンモクセイの香り」「道に広がるイチョウの絨毯」など個々で秋のイメージはそれぞれだと思います。そんな中、今回は、秋花の代表格である「キンモクセイ(金木犀)」について深掘りしてみたいと思います。

 

キンモクセイは、常緑の小高木樹で、地植えだと3~6mまで成長します。原産は中国で、江戸時代に中国から日本に入ってきたと言われており、その時に雄株のみが日本に入りました。その後、挿し木によってクローン苗木が生産され日本中に広まっていきました。日本に現存するキンモクセイの木は、すべて雄のクローンであるため、すべて雄株になります。またキンモクセイは雌雄異株であるため、日本には雌株がなく実をつけることは不可能です。そのために日本ではキンモクセイの実を見ることはできません。もともと花と香りを楽しむことが目的ですので、雄株だけが日本に入ってきたのかもしれませんね。

 

キンモクセイは8月ごろに花芽をつけ、9月下旬から10月下旬にかけて開花します。1つの花芽から多数の橙色の小さな花をつけ、強い芳香を放ちます。開花期間は1週間と、とても短いです。毎年春になると「桜開花情報」がニュースで取り上げられ、温暖な西日本から開花が始まり、東北部にかけて桜が順次開花していきますが、キンモクセイは、その逆で、寒い北部地方から九州にかけて順次開花していきます。桜は、冬の休眠打破から累計平均気温「400度の法則」で開花することが知られていますが、キンモクセイの開花メカニズムは、気温と日長が関係しているといわれています。

 

キンモクセイの開花は例年だと9月下旬ごろから開花が始まりますが、昨今では温暖化の影響により10月初旬~中旬ごろと少しずつ後ろにずれ込んできていて、高温の影響で花付きも悪くなるといった影響も出てきています。

キンモクセイの花言葉は「気品高潔」であるように、すごく綺麗好きで生育環境の影響を受けやすく汚染した大気中では花を付けないなど非常に敏感な木とも言われています。

 

日本三大香木のひとつとして、日本の庭木として古くから親しまれてきた金木犀(キンモクセイ)。温暖化の影響で開花時期に影響がでていますが、秋を感じさせてくれる貴重な香木です。秋の行楽シーズンで外出される方も多いと思いますが、外出先でキンモクセイの香りがしたら今回紹介させていただいたエピソードを思い出して、花や香りを楽しんで秋をより一層感じてもらえれば本望です。

 

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