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【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】
2024年10月
複数の品種を同じフィールドで栽培する「混植」の可能性を示してくれる興味深い研究が報告されました。今回は混植の可能性について、お話したいと思います。
引用文献:https://www.nature.com/articles/s41467-024-52374-7
複数の植物種や品種を同じフィールドに植える「混植」は、さまざまな恩恵をもたらします。これは有史以前から使われてきた技術ですが、近年再び注目を集めています。
混植の異種間の例としては、トウモロコシ、マメ、カボチャを同時に植える方法があります。これはインディアンが古くから用いてきた農法として知られています。マメは空気中の窒素を固定してトウモロコシやカボチャの生育を助け、トウモロコシはマメのつるの支柱となります。さらにカボチャは地表を覆って雑草を抑制し、土壌の温度が上がり過ぎないように調整します。こうした仕組みにより、収量を確保しつつ植物同士が互いの生育を助け合う、高効率な農業が実現します。
また、同じ種内でも異品種を混植することで効果的な栽培が可能になることもあります。例えば、葉を食べる虫を遠ざける成分を放出する品種と、根を食べる虫を遠ざける成分を放出する品種を一緒に植えることで、片方の品種だけを植えた場合よりも害虫被害を抑えることが可能になります。両方の強みを持つ単一の品種が開発できれば理想ですが、植物の特性は多くの遺伝子や要因が関わっているため、そのような品種を作り出すには多大な時間とコストが必要です。そのため、混植によって同様の効果を得ることができるならば、非常に有効な技術と言えます。
混植には多くのメリットがあるように見えますが、実際には有効な組み合わせを見つけるのが難しく、育種と同様に膨大な作業を要します。それでも、有効な組み合わせを特定できれば、新品種を開発することなく直接フィールドに適用できるため、「新品種の一歩手前の技術」として注目に値します。
これまで、混植に適した品種の組み合わせを見つけるには、膨大な数の品種を実際に組み合わせて栽培し、害虫や病気、気候への反応を調べるしかありませんでした。
しかし近年、バイオインフォマティクスの進展により、植物の特性と遺伝子変異の関連性を評価できるようになりました。その結果、特定の遺伝子変異が植物の特性に与える影響を予測できるようになっています。さらに、異なる遺伝子変異を組み合わせることで相乗効果を発揮する可能性も予測できるようになりました。
この技術により、必要であれば新品種の設計・作出も可能ですが、必ずしも育種を行う必要はありません。有用な遺伝子変異を持つ品種を同じフィールドで混植することで、新品種を育てているかのような効果が得られるのです。
実際に最近の研究では、異なる抵抗性を持つ2系統を同時に植えて、害虫に対する抵抗性を高めることに成功しています。これはまだ実験植物での成果ですが、今後園芸作物にも応用されれば、さまざまな品種において活用の機会が広がるでしょう。
混植技術開発が成功すれば、さまざまなビジネスチャンスが創出される可能性があります。
育種メーカーはすでに多くの有用品種を保有していますが、「病気に強くて収量も高い」品種の作出に苦戦することもあります。混植を活用することで、既存の品種に新たな価値を見出すことができるかもしれません。
高機能な新品種は、単に導入するだけでは収量は上がりません。新品種が栽培地域に適しているかを見極め、新品種に合った栽培方法を採用することで効果が得られます。もし混植に適した品種の栽培経験があれば、それらを組み合わせることで、容易に生産量の向上が期待できます。
育種の初期投資が少ないため、作物の価格が高騰することはありません。また、栽培手法も大きく変わらないため、新技術導入に伴う環境負荷やコストも低減されるはずです。その結果、混植で生産された高品質な作物をリーズナブルな価格で購入できるようになるでしょう。
混植は、既存の品種や栽培技術を活かせるサステイナブルな技術といえます。今後、新品種開発に加えて「混植技術」による栽培改善も一般的になるかもしれません。新たなビジネスチャンスを探っていきましょう。
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