【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2019年1月

*ダイズと根粒菌はお見合いしている?!*

 

「気温の上がり始めた初夏、畑の一角で発芽したダイズは、根粒菌と共生することを夢見ていました。様々な根粒菌がダイズのもとを訪れますが、彼らの差し出すプレゼントが気に入らず、なかなか共生関係を築けずに来ました。そんな中、たまたま出会った根粒菌の差し出すプレゼントは珍しいもので、それがきっかけで意気投合し、無事に共生関係を築けたのでした…」

 

世界でも重要な穀物の1つであるダイズは、根粒菌と共生関係を築き、大気中の窒素分を養分として利用できる植物です。ダイズと根粒菌の共生関係は、上のお話の様に、相手をしっかり見極めた後にようやく始まる関係であり、複雑な制御が行われています。50年以上に及ぶ長く精力的な研究により、この相手を選ぶ仕組みが少しずつ解明されてきました。1960年代には、Rj2遺伝子を持つダイズが特定の根粒菌の感染による根粒形成が特異的に抑えられることが確認されていました。その後も研究が続き、2010年にRj2遺伝子が抵抗性Rタンパク質をコードしていることが判明し、ダイズと根粒菌の共生関係が植物病原応答と類似するシステムにより制御されていると推測されてきましたが、その分子機構は不明でした。

 

昨年、その制御メカニズムの一部が新たに解明されました。根粒菌はNopPと呼ばれるタンパクを分泌します。NopPは「3型分泌タンパク質」に分類され、この3型分泌タンパク質は植物病原菌が宿主に病原因子などを撃ち込む装置であるため通称「毒針」と呼ばれています。

 

この非常に物騒な根粒菌からのプレゼントであるNopPタンパク質は、ダイズ植物体の中に挿入されると異物を認識するRタンパク質と遭遇し、Rタンパク質に「異物と認識されなかった場合」のみ、ダイズと根粒菌の共生関係が成立します。また、NopPは全てのダイズ根粒菌が持つタンパク質であり、ダイズと根粒菌の共生を左右する要素ではないとも思われましたが、NopPタンパク質内の一部のアミノ酸残基が菌株ごとに異なることが判明し、その違いをダイズのRタンパク質が見分けていることも判明しました。このように、根粒菌がダイズに受け入れられるプレゼント(NopP)を持っているかどうかが、共生関係を制御する一因のようです。

 

ダイズの生産力強化は、地球規模での食料不足を補う有効な手段の1つです。共生メカニズムの研究が進めば、例えば政略結婚のように窒素固定能の高い有用根粒菌だけを共生相手に選ぶダイズ品種を作り出すことも可能ですし、すでにRj2遺伝子の集積により感染菌株を制御する品種が存在しています。植物の秘めた力を解明していけば、迫る球規模の問題を乗り越えるヒントを与えてくれるような気がしますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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