【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2020年2月

*世界の漢方事情から日本ができること*

 

現在の日本の医療現場では多くの医師、薬剤師が生薬を原料とした漢方薬を扱っています。また、医療保険が適用される漢方薬もこれまでに150種を超え、非常に幅広く漢方薬が用いられてきています。

 

その一方で、近年中国産生薬の価額が高騰し、日本の薬価より高価額の品種が増えたことで、漢方製剤および生薬を扱う業界の収支が悪化し、煎じ薬などの生薬を直接用いる治療に支障をきたしているのが現状です。加えて、中国産の甘草と麻黄の輸出規制が持ち上がり、生薬の需給に問題が起きています。その背景には、現地での乱獲による自然破壊や環境保護のため、輸出量が規制されていることが一因としてあります。

 

日本の生薬生産において、江戸時代から明治初期まで輸出品として海外で高く評価されてきた生薬のひとつに「オタネニンジン」があります。中国産オタネニンジンの生産拡大と品質向上で、日本産オタネニンジンは、国内外の市場から締め出され、現在の国内生産基盤は、壊滅状態にあります。こうした中、年間約600トンの中国産オタネニンジンが輸入されており、国内需要は上昇を続けています。

 

オタネニンジンの生産が困難な理由は、生産期間が長い(収穫まで4〜6年)ことです。ニンジンの生育の特徴である休眠期(冬季に全く成長しない期間)を無くす目的で、閉鎖型人工光植物工場を用いて、人工的に休眠期を打破する試みが実施されています。露地栽培で4年を有するところを、植物工場で1年間栽培された2年生相当苗を供給することで、露地栽培が通常の半分である2年で生産できる計算となります。

 

こうした圃場栽培の効率生産にむけた研究により、圃場生産者の負担・経費削減に繋がる可能性があり、適正な薬価に対応した医療用医薬品の原料になりうると考えられています。その他にもゲノム編集技術や植物組織培養技術を応用することで、重要生薬の有用二次代謝産物の安定生産などの生産方法も考えられるでしょう。

 

今後、益々すすむ少子高齢化社会において、需要が更に高まっていくであろう生薬を、より安価に安定生産できる体制が必ず必要になってきます。そのために、日本がもつ最先端の技術をできるだけ駆使して、日本、世界へと貢献していきたいですね。

 

 

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