【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2016年4月

*紅白花の競演「源平咲き」のハナモモ(花桃)*

 

春の時期、桜に負けじと美しい白色、紅色、ピンク色の花をまとわせているハナモモ(花桃)をよく見かけることがあります。ハナモモは花を観賞するために改良されたモモで、庭木などによく利用されています。

 

このハナモモですが、よく見ると一つの木に、紅白の花が咲き分かれています。このような咲き方は、「源平咲き」と呼ばれ、語源は源平の戦いで、源氏が「白」旗、平氏が「赤」旗を掲げたことに由来します。紅白の花以外にも、ピンクや紅白混在の花も見られ、まるで源氏と平氏が競い合っているようです。

 

さて、同じ遺伝子を持った一本の木から源平咲きが現れるのはどうしてでしょうか。枝変わりによる突然変異による現象の他に、最近の研究において、ハナモモの花の着色遺伝子が発見され、Peace (peach anthocyanin colour enhancement)遺伝子と命名されました。

 

Peace 遺伝子はハナモモの花弁においてアントシアニン合成を促進する転写因子で、花弁をピンク色に着色する働きを持ちます。一方で、ゲノムDNAを移動することでPeace遺伝子の働きを阻害する遺伝子(トランスポゾン)の存在が斑入りや白色の花が生じる原因と推測されていますが、まだまだ謎は多いようです。

 

「源平の戦い」は遺伝子レベルでの合戦を続けるのでしょうか、もしかしたらPeace遺伝子が“平和”をもたらしてくれる日が来るかもしれませんね。

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