【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2016年7月

*江戸時代のバイオテクノロジー、変化アサガオ*

 

アサガオが咲き始める季節になりました。アサガオというと馴染みのあるトランペット型の花を想像すると思いますが、変化アサガオと呼ばれる園芸品種群があるのはご存知でしょうか?

奈良時代に渡来したアサガオは、江戸時代ごろから園芸植物として流行し、自然交雑することで花の色や形の変化した“変化アサガオ”が数多く作出されました。代表的なものに“牡丹咲”や“獅子咲”があります。“牡丹咲”は花びらが八重咲状、“獅子咲”は花びらが複数に裂け、細い管状などになる突然変異体です。このほかにも“車咲”、“桔梗咲”、“采咲”など、花の形だけでも多くの変種があります。

古典的な遺伝学解析から、変化アサガオの変化の原因となる遺伝子は100種類以上あるとわかっていましたが、なぜガンマ線や化学物質による変異原処理なしで、このように多くの突然変異体が得られたのかは最近まで不明でした。

最近の研究から、アサガオには活性の高いトランスポゾン(動く遺伝子)が存在し、これが花の形や色を決定している遺伝子に挿入されることで、正常な遺伝子の働きを壊し、突然変異を引き起こしていると考えられています。

江戸時代の人々は、優れた観察力とトランスポゾンによる突然変異体育種という、現在でも使われているバイオテクノロジーを、知らず知らずのうちに利用していたんですね。

変化アサガオは植物園や博物館で展示されているほか、桔梗咲アサガオは園芸店で種子が購入できます。今年の夏はちょっと変わったアサガオを育ててみませんか?

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