【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2018年6月

*日光を探し求めて歩く木『ウォーキングパーム』*

 

世界中には、私達の想像を超えるような生き方をしている植物が多く存在しています。ウォーキングパームもその植物の1種です。ウォーキングパームは、中南米の密林に生息しているヤシの仲間で、最終的には、直径20cm、高さ10〜20mにまで成長します。背が高いゆえに、木のてっぺんにまとめて葉が生えるため、成長してしまえば、他の木より頭ひとつ出るので、太陽光を充分に浴び、光合成をするこができます。しかし、背丈が低い幼木のうちは、そうはいきません。

 

そこで編み出されたのが、光を求めて自らが移動することです。ん? 植物が移動するとは、いったいどういうことなのでしょうか。じつは、ウォーキングパームは、「支柱根」というタコ足のような根が生えており、この支柱根によって幹は地表から1m以上も高い位置までもち上げられます。そして、光があたる側の根は、どんどん生育し太くなりますが、陰になる反対側の支柱根は、腐っていき、やがて退化していきます。光があたる側の根が成長することで木が斜めになり、木が倒れるのを防ぎ、平衡を保とうとする形で新しい根が生えてきます。

 

このように常に日が当たる側の根が発達し、反対側は退化することを繰り返し、密林に注がれるわずかな太陽光を求めて移動する様子が、あたかも「歩いて」移動しているかのように見えることからウォーキングパームと名付けられたようです。その移動距離なんと1年間で20mにも及ぶとも言われています。

 

密林に注ぐわずかな光を求めて自身の根をうまく利用し、なんとか生き残ろうとするウォーキングパーム。限られた環境の中で、あの手この手を使い、望むものを追い求め続けることが大事だと、そんなメッセージを私たち人間に届けてくれたのかもしれませんね。

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