【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2018年7月

*身近な植物からの新発見 - 桑の耐虫タンパク質*

 

今このときも有用な知見を求め、世界中で植物を使った研究が行われています。研究対象となる植物はこれまで注目されていなかったり、新発見された植物だったりしますが、時には身近な植物から新しい知見が得られることだってあります。

 

カイコの餌として知られる桑の葉は、実はカイコ以外の昆虫に対して強い毒性と耐虫性をもち、これは桑の乳液に含まれる3種の糖類似アルカロイド物質に起因すると判明しています。これらの成分は人用のサプリメントなどにも応用されていますね。

さらに最近の研究では、桑の乳液に含まれる「MLX56様タンパク質」が、これまでに報告されたことがない全く新しいメカニズムで害虫の成長を阻害することが発見されました。このタンパク質は、ガ類の幼虫の消化管内に存在する「囲食膜」というキチンで構成された薄膜を異常に肥厚させて消化機能不全を起こさせます。しかも、0.01~0.04%という極めて低い濃度で餌に加えるだけで、幼虫の成長を妨げることも判明しています。

 

MLX56様タンパク質は、害虫から植物を守る新資材として有望な成分です。ヒトを含む脊椎動物の体内にはキチンも囲食膜も存在しないため、MLX56様タンパク質を人や家畜が摂取した場合の安全性が高いと考えられています。MLX56様タンパク質をベースとした農作物保護に役立つ新たな資材の研究開発が期待されますね。

 

今回ご紹介した桑のように、身近な植物からもまだまだ有用な知見が得られるでしょう。植物は可能性の宝庫なのです!

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