【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2019年7月

*乾燥に強くなる植物ペプチド『CLE25』の発見と農業生産への貢献*

 

植物は環境中で乾燥、高塩などのストレスを受けると、細胞内でアブシジン酸(ABA)を合成し、ストレスに対抗することが知られていす。

ABAの蓄積は、葉の気孔を閉鎖して植物体内の水分が蒸散により失われることを防ぐことが考えられてきました。しかし、組織間の情報伝達を担う神経系を持たない植物が、乾燥を感知した根から、どのように地上部の葉においてABAを蓄積させるかは不明でした。

 

理化学研究所・東京大学・徳島大学の共同研究グループは、シロイヌナズナを用いた実験から、シグナル伝達性物質であるCLE25ペプチドが根から葉に移動し、葉のABA蓄積を調節することで気孔の閉鎖を誘導することを明らかにしました(Nature誌, 2018年556巻235-238)。シロイヌナズナで発見されたCLE25ペプチドは、主要作物であるイネやコムギなどのゲノム中にも保存されていることも明らかになりました。ABAは植物に耐乾性を付与することから、地球規模における農業生産に貢献することが広く認識されています。

 

また今後、様々な環境ストレスにおけるシグナル伝達性ペプチドの同定と、ストレス応答の仕組みが解明されれば、将来、どんな環境にも適応して生育することのできる「万能ストレス耐性野菜」などが開発される日が来るかもしれませんね。

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